業界ニュースへ戻る
地域的展望
(Regional Outlook, July/August 2008)
ロシアの不動産高需要による不動産管理士不足
ダーネル・リトル著
急速な経済発展のおかげで、ロシアの不動産市場は、過去8年間、着実に成長を続けています。投資額はこの2年間だけでも約3倍になり、不動産管理士の需要が高まりつつあります。
世界的な法律事務所であるスクワイア・サンダース&デンプシーの、モスクワに本社を置く不動産グループの長であるディミートリー・クニッチャ氏は、「市場は非常に活発です。多くの海外投資家が進出しており、多くのロシアの投資家も、今は、株式市場の実行可能な代案として不動産市場を見ています。」と述べています。
投資家が最初に目を向けたのはモスクワとセンクト・ペテルスブルクでしたが、過去5年間に、他の地域、特に「シティーズ・ミリオニキ」と呼ばれる人口百万人以上の都市が、急速に開発されています。
ロシアにはそのような都市が13あり、主にウラルのヴォルガ川と南部に集中しています。これらの都市は、モスクワより土地が安く、投資家にとってより魅力的な市場機会と高収益を可能にしています。
不動産管理士の皆さん、仕事の応募はこちらにどうぞ
ロシアの不動産市場は、相対的にまだ初期の段階にあります。モスクワで最初にAクラスのオフィスビルが開発されたのは1990年でした。1990年代初頭に、そのほかにも12-3のビルが建ちましたが、ロシアでビジネスをしている西洋の会社や、急速に成長しているロシアのビジネスの高級オフィス需要を満たすことはできませんでした。
商品の不足と膨大な需要が、急速な不動産市場の開発を刺激しました。そのため、特にオフィス、小売、工業系の不動産管理士の需要が、ロシア全国で急増したのです。不動産管理の分野は、ほとんどのロシアの知的職業専門家にとって新しいものであり、多くの外国の管理士が、彼らの専門知識をこの開発途上の業界に貸すためにロシアに集まっています。
ロシアでリーシングと人事を教えているCPM®のシャノン・オールター氏は、彼女の受講生のほとんどが、不動産管理どころか、不動産に関して何の経験も持っていないと述べています。「これは、彼らにとっては全く新しいチャンスなのです。」
ロシアの不動産管理士が未熟であることは、転勤をいとわないアメリカ人不動産管理士にとっては大きなチャンスですが、チャレンジも大きく、その一つはロシアのビジネスの仕方への順応です。ロシアのビジネスは、いろいろな面でアメリカやヨーロッパほど発達していないので、アメリカ人不動産管理士は柔軟性を持たなければならないと、オールター氏は述べています。
「業者は、何でも、直前まで、絶対に大丈夫だと言います。『コンピューターが届きます。エアコンが届きます。』でも、ぜんぜん届かないのです。彼らは、何でも壊れることはないと思っているようで、永遠に使えると考えているみたいですね。」
ロシアのビジネスがこの新しい不動産開発と管理の分野を知るようになるまで、アメリカ人管理士は、失意落胆の連続でしょう。
「ここは、何でもきちんと整理されていてうまく行くことを好む人には向いていません。とても動的な環境で、めまぐるしく変わります。」とオールター氏は述べています。
新海域の舵取り
国際的不動産会社であるハインズのモスクワ不動産ポートフォリオの資産管理士、デイビッドC.エルキン氏も、「ビジネス的に成熟」していて、問題について考え、商業規律に沿って解決する能力を持っている人をロシアで見つけるのは、大変に困難であると考えています。
ハインズは、モスクワで、オフィスビル8棟、複合ビル3棟、居住系タウンハウス開発物件一つ、倉庫1棟の不動産管理サービスを提供しています。エルキン氏は去年の9月からモスクワで働いていますが、ロシア政府を含め、ロシアのビジネス環境に困難を感じています。
「ロシア政府に比べたら、国税庁なんて弱腰ですよ。規制は非常に多いし、 どのレベルにおいても腐敗と取り組まなければならないというのが現実です。政府だけでなく、毎日の仕事も、自社の従業員もそうです。これは、掌握していなければならない現実の問題です。」
事業用不動産会社で、AMO®のCBリチャード・エリスの上級小売顧問であるシャノン・クィルティー氏によると、保守を外注して従業員の給与支払を節約することに慣れている海外投資家は、ロシア政府の規制に驚かされることがあると述べています。
「技術スタッフ要件に関しては、多くの規制があります。例えば、エスカレーターやエレベーターを動かすときには、保守と緊急事態の対処のために、少なくとも二人の人が現場にいなければなりません。」
CBリチャード・エリスは、ロシアのモスクワとその他の地方大都市で、800,000平米以上のAクラスのオフィス、小売、工業系物件を管理しています。クィルティー氏は、この1年の間に、ヤロスラブリ、ノボシリビスク、モスクワの、三つのショッピング・センターのオープニングに関与してきました。
クィルティー氏は、アメリカで不動産を管理できれば、ロシアでも管理できると考えています。しかし、アメリカの不動産管理士は、多くのユニークな障害に対処する覚悟がなければなりません。
「最初に勧めるのは、言葉の勉強です。言葉がちゃんと理解できないと、他の人に頼らなければなりません。それにはもちろん時間と忍耐が必要ですし、望ましい結果を出したいなら、あなたの目標を明確に理解してもらっていることを確認することが非常に大切です。言葉の違いだけでなく、文化の違いもありますので、誤解はよくあります。
二番目は、誰も、特に業者は、何もただではしてくれないと言うことを理解することです。細かいことを教えてくれる前に、その業者を雇わなければなりません。『営業行為にはお金がかかる』などという概念はないのです。後は、忍耐ですね。ロシア人によく言われることですが、ロシアでは何でも可能です。ただ時間がかかるだけです。」
将来の展望
国際的事業用不動産会社GVAワールドワイドのメンバーであるモスクワに本社を置くGVAソイヤーの社長ヴェラ・セツカヤ氏によると、オフィスと小売不動産市場の急成長にもかかわらず、モスクワ、サンクト・ペテルスブルク、その他すべてのロシアの地方都市では、どのようなタイプであれ、また不動産が不足しています。
「モスクワでは、需給は少なくとも2012年まで均衡が取れないと予想されています。モスクワの空室率は安定していて、Bクラスのオフィスビルでも5%もなく、Aクラスの高級オフィスビルはゼロになることもよくあります。」
したがって、不動産管理士は、少なくとも近い将来は需要が高いと言うことです。
「チャレンジも大きいですが、適任者にとっては、チャンスに限りはありません。」
クィルティー氏は、多くの知的で勤勉なロシア人が興味を抱いてこの業界に入っており、彼らが、海外駐在の不動産管理士を無用にする、あるいは時代遅れにする日が来るであろうと指摘しています。
「ここでは、この業界は非常に早く動いていますので、ロシアで不動産を管理したいのなら、今のうちです。」
ダーネル・リトルさんは、JPMの寄稿者です。この記事に関する質問は、mnaso@irem.orgへどうぞ。