業界ニュースへ戻る
不況時の家賃問題解決策
厳しい時代における商業テナントとの交渉の秘訣をCPMが教えます
JPM2009年3-4月
リチャード・ミュールバック、CPM®
不況になると、多くの商業テナントは経済的に苦しくなり、家賃を期日までに支払えなくなるテナントもあります。中でも、小売テナントは、多くの人々が必需品以外の支出を控えますので、経済の弱体化に直撃されます。全国的な小売店は、不況で生き残る計画を立て、成績の悪い店舗を閉め、中心的なクライアントに焦点を当て直し、コスト削減策を導入して、乗り越えたときにはより強くなっています。
経済危機になると、いくつかの全国的な小売店は店舗閉鎖を発表し、破産申請をするものもあります。メジャーなテナントがいるかどうかに関わらず、道路沿いの小規模ショッピング・センターの大部分は地元の小売店であり、彼らの問題はより深刻です。それらの小売店は、通常、店舗がひとつしかありませんので、その店が成功するかどうかで、彼らの運命は決まるのです。ショッピング・センターの成功は、小売店次第ですので、一つの店舗が店を閉めると、センター全体のイメージに響きます。景気がよければ、数ヶ月のうちに替わりのテナントが入って、ショッピング・センターは継続してうまく行きます。しかし、景気が悪いと、空室を埋めるのは時間がかかり、また埋めても家賃は下がります。
不動産管理士としての私たちの典型的な対応としては、家賃を期日までに払えないテナントの相談には乗りますが、それはあくまで短期間です。問題が続くと、テナントを入れ替えたほうが楽かもしれません。しかし、景気が悪いとテナントを入れ替えることは困難であり、厳しい時代においては、不動産管理士も不動産のオーナーも、問題の非伝統的な解決策を見出さなければなりません。
以下に挙げる解決策は、多くの不動産管理士にとって不愉快なものかもしれませんが、情状酌量しなければならない状況下においては、テナントと、テナントからの家賃収入を守る唯一の手段であるかもしれません。特にショッピング・センターの場合、これらの解決策を検討する前に、まず空室がもう一つ増えた場合のインパクトを分析するべきです。
市場要素
検討しなければならない最も大切な要素は、物件あるいは物件のオーナーの経済状態です。物件は、空室が増えて収入が減っても耐えることができるでしょうか。それはどのくらいの期間でしょうか。 次に大切な要素は、リース市況です。空室をリースし直すのにどれだけかかるでしょうか。失う家賃、家賃の譲歩、テナントの造作変更、テナントを入れ替えるためのリーシングのコストはいくらでしょうか。物件がショッピング・センターである場合、空室が増えたら、ショッピング・センターの集客力、センターのイメージ、既存のテナントのやる気、テナント候補のショッピング・センターに対する所感にどのような影響があるでしょうか。
不動産管理士として、経済的危機にあるテナントを入れ替えるためのコストが高すぎる、あるいは何年も物件の資産であったテナントを助けたいと判断した場合は、以下に述べる解決案のひとつ、あるいはいくつかを検討するのも良いかもしれません。
問題のありそうなテナントの見分け方
経済的問題を抱えているかもしれないテナントの最も明白な兆候は、家賃滞納です。そのほかにも、売り上げの低下、在庫の減少、棚に残ったままの古い商品、営業時間やスタッフの変更、店の宣伝広告の減少などの兆候があります。テナントとの意思の疎通があれば、予想される、あるいは今経験している経済的問題について、信頼して話してくれるでしょう。深刻な経済的問題を抱えているテナントは、通常、家賃の譲歩と言う形の援助を求めてくるでしょう。物件のオーナーに解決案を提案する前に、テナントの現在の財務報告書を手に入れるべきです。テナントが複数の店舗やビジネスを持っている場合は、すべての財務報告書を出してもらうべきです。他のビジネスに、苦闘している店舗をサポートして余りあるキャッシュフローがあるかもしれません。
テナント個人の財務報告書も出してもらうべきです。テナントの純資産が、以下の解決策を正当化しないかもしれません。このデータに基づいて、以下のいずれかの解決案についてテナントと話す、あるいは申し出ることを、物件のオーナーに勧めることができます。
可能性のある解決策
不動産管理士は、不況や落ち込んだリース市場で苦しんでいるテナントのために、直接的また非直接的な金銭的解決策を生み出すことができます。非直接的な金銭的解決策は、通常、恒久的であり、直接的解決策は、通常、一時的です。解決策の中には、主に小売テナント用のものと、どの商業系のテナントにも適用できるものとがあります。
非直接的な金銭的解決策
テナントは、必要以上のスペースを借りているか、あるいは占有しているスペース全体の家賃を払うことができないかもしれません。テナントの面積を減らせば、占有コストも減ります。基本家賃も転嫁する経費も減ります。テナントがショッピング・センターを借りている場合は、光熱費も下がります。小さな店舗は、従業員の数を減らして、人件費を減らすこともできます。
テナントを小さな部屋あるいは家賃の低い部屋に移すことも、非直接的な金銭的解決策の一つです。これが実行可能な選択肢であるかどうかは、テナントが移動するためのコストと、小さな部屋があるかどうかによって決まります。
他の商品も売ることができるように、店舗の使用条件を広げることも良いかもしれません。しかし、これは、ショッピング・センターのテナントの組み合わせや、他の店舗の売り上げに悪影響を与えないことを確認しなければなりません。
多くの地元の小売店は、トレーニングをするだけの財力がないので、テナントたちのためにコンサルタントを雇って、小さなセミナーや、一対一のコンサルをしてもらうのも良いかもしれません。これらのプログラムは動機付けであるべきですが、同時に、宣伝計画、値下げの仕方、店内のサイン、ウィンドーと店内の飾りつけ、予算や販売技術などを、小売店に提供しなければなりません。目的は、小売店がよりよい商売をして成功するよう助けることです。小売のコンサルタントは、通常、1日に$1,500から$3,000請求します。2時間のセミナーを3回と、10人の小売業者のために15時間のコンサルをしてもらうと、費用は、$4,500から$9,000プラス旅費になります。
もしショッピング・センターのオーナーがそのようなプログラムをするだけの価値があるかどうかを迷っている場合は、この経費は、ショッピング・センターの最も大切な資産であるテナントへの投資であると答えてください。多くのリージョナル・モールは、景気が良いときも悪いときも、このようなプログラムを導入しています。
お互いに理解した上でのリースの解約も一つのオプションです。物件のオーナーは、テナントからリースの解約料を受け取るべきです。リースの解約料をいくらにするべきかについては、経験則と言うものはありません。リース解約によって問題のあるテナントはいなくなりますが、同時に空室が生じます。
直接的な金銭的解決策
テナントに何らかの形で直接的な金銭的救済をすることは、物件のオーナーにとっては魅力のない解決策ですが、テナントを助け、空室を避け、いくらかでも家賃を回収するためには、これが唯一の方法であることもあります。以下は、いろいろな形の家賃救済のリストです。
繰り延べ家賃:テナントの現在の滞納や、将来の家賃のいくらか、例えば向こう半年を繰り延べて、後で、例えばリースの最後の12ヶ月間、払ってもらいます。毎月の家賃の一部あるいは全部を、6ヶ月から12ヶ月繰り延べることができます。繰り延べた額に利子を請求するオーナーもいますが、利息の総額は大した額ではありません。苦戦しているビジネスにその負担を負わせてどうなると言うのでしょうか。
歩合制家賃のみ:ほとんどの小売テナントは、最低家賃以上、つまり売り上げのパーセンテージに基づいた家賃を払います。標準以下の小売店は、売り上げが低いので、歩合制家賃ではなく、最低家賃を払うことになります。テナントのリースを改定して、特定期間、例えば1年、歩合制家賃のみを払うことにすることもできます。歩合制家賃は、テナントのリースの現行の率でもいいですが、数%上げることもできます。1年が終わると、家賃は、最低家賃か売り上げのパーセンテージに基づいた家賃に戻ります。
家賃免除:これは、物件のオーナーにとって最も受け入れがたい形の直接的な金銭的救済です。特定期間の毎月の家賃の一部あるいは全部を免除し、払い戻すことはありません。家賃ゼロよりは少しでも取れたほうが良いと言うのがその理論です。これも、将来、家賃を全額取るために、テナントが生き残るのを助けるというのが目的です。物件のオーナーは、免除した家賃のパーセンテージを宣伝費に上乗せしたり、新商品に使ったりすることを要求することもできます。
敷金:敷金の一部あるいは全部を、未納あるいは将来の家賃に当てることができます。敷金は、テナントが家賃未納で立ち退きになった場合、あるいは未納のまま退去した場合、テナントの金銭的不履行を補うために使われますので、オーナーは何も犠牲にする必要はありません。
リースの再交渉
家賃の譲歩をする場合は、リース条項の中に何か厄介なものがないか見直すべきです。そのようなリース条項は、直接的な金銭的救済をする代わりに譲歩してもらって、再交渉するあるいは削除してもらうことができます。譲歩は、すべてリースの補遺として文書化するべきです。補遺には、守秘義務条項を入れて、もしテナントが譲歩を公開した場合、契約は直ちに解約され、家賃その他の料金は元に戻るようにするべきです。自分のビジネスが非常にうまく行っていなくて家主から家賃救済をしてもらわなければならなかったということを、テナントが他のテナントに告げることはまれです。また、補遺は、テナントが家主に対して何も要求がないことを明記するべきです。
非直接的な金銭的解決策や、特に直接的な金銭的解決策は、いつでも勧められると言うものではありませんが、不況のときには、差し迫った問題に一時的な解決策を提供してくれます。実際、家賃救済が唯一の解決策であることもあるのです。