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不況時のテナントとの交渉の仕方
JPM2009年7-8月
この記事は、IREMから出版された新著リーシングのプロセス:オーナーとテナントの観点からの抜粋です。
アラン・アレキザンダーとリチャード・ミュールバックCPM®著
リースの交渉においては、私たちのクライアントであるオーナーにとって最も良い取引をするための戦略を立てます。市場が良いときは、クライアントのニーズと懸念のみに注意を集中して、テナントの懸念を忘れがちです。経済が堅調なときは、テナントにはあまりオプションがなく、ほとんど交渉しないで条件を呑むでしょう。しかし、不況の場合は、各テナントの懸念やニーズを検討することがオーナーにとっても得策です。
オフィスのテナントは家賃と転移費用が低いことを求め、小売のテナントは、家賃が安いことと、収益が上がらなかった場合に店を閉めることができるかどうかを心配します。これらの問題は、好景気のときにはありません。
今日の不況と落ち込んだ不動産市場において、不動産管理士とリース仲介業者は、ここ数十年間経験したことのない厳しい交渉をする準備ができていなければなりません。不動産管理士とリース仲介業者は、オーナーにとっては重荷になっても、リース取引をするために必要ないくつかのリース条項を交渉しなければならないでしょう。これらの条項をうまく交渉して、物件のキャッシュフローと価値への打撃を緩和しなければならないのです。
オフィスのテナントとの交渉
オフィスのテナントは、何千ドルもの節約につながる多くの事柄が、不動産市場が悪いときには交渉次第でどうにでもなることを知っています。最初の問題は基本家賃です。家賃を交渉する最善の方法は、市場と競合ビルを良く調べることです。そのためには、競合ビルの家賃の価格帯を出すために必要な、家賃と空室に関する市場調査を定期的にしなければなりません。当該ビルと競合ビルのデータを比べて、当該ビルの家賃と譲歩を提案することができます。
次に、オーナーが家賃を最低どこまで下げる気があるのかを知っていなければなりません。これは、そのほかにどんな譲歩をするかにもよります。物件のオーナーと会って市場調査とそのビルの家賃について相談をする場合、最終的に家賃とそのほかのリースの条件を決めるのは、オーナーです。
基本家賃の交渉の一つの要素は、リース期間中に基本家賃がどのように上がっていくかと言う点です。物件のオーナーと相談して、基本家賃を上げるか、上げるとすればどれだけ、まだどの程度の頻度で上げるかを決めるのです。
テナントがまず最初に求めるのは、一ヶ月あるいはそれ以上のフリーレントです。普通の市場であれば、フリーレントはしません。する場合は、限られた期間です。何カ月分無料にするか、リース期間の最初にするのか、あるいは期間中一定期間おきに無料にするのかを決める必要があります。多くの場合、フリーレントはリースの最初にして、先に処理してしまいます。
不況の場合、多くのビルにはキャッシュフローの問題があって、初年度に何ヶ月も家賃を無料にすることができないこともあります。不況の場合は、毎年リースの一ヶ月目を無料にしたり、リース期間中無料の月を均等に振り分けたりすることがよくあります。
テナントの次の要望は、転嫁される経費の年間上昇率の制限でしょう。この譲歩をしなければならない場合は、上昇率の上限と、固定資産税や除雪など、制御できない経費を入れるかどうかを交渉しなければなりません。テナントは、標準以上の造作変更も要求するでしょう。これも、市場を調べて、市場がテナントにどのような造作変更を提供しているかを知っておくべきです。テナントの造作変更は非常に高くつきますので、提供する造作変更と基本家賃とは連動させるべきです。
移転はお金がかかりますし、ビジネスを中断させます。ほとんどのオフィスのテナントは、移転する必要があるわけではありませんが、不況時は、オーナーが非常に魅力的なオファーをして、テナントが移転することを促すのです。テナントに、移転費用を一部あるいは全額出すこともあります。移転費用は高くつきます。家具や設備の移動だけでなく、今の場所から配線を取り除いたり、コンピューターや電話のシステムを取り付けたりなど、付随する経費があります。移転費用を出す場合は、費用の見積もりを出すことが大切です。
賢明で良く事情を知っているテナントやテナント代理人は、新しい便箋や名刺、テナントの顧客への通知、準備期間中のフリーレントなど、移転の付随的な経費の負担も交渉するでしょう。
小売のテナントとの交渉
小売のテナントは、オフィスのテナントと同じように、占有コストを気にしますが、その場所で運営して利益があるか、つまり赤字経営にならないかどうかも懸念の一つです。この懸念を軽減するために、小売業者が、テナントの造作変更や設備費を交渉することもあります。これは、小さな小売店であれば数千ドルの定額、非常に成功している小売店やレストランのチェーンなどの場合は数十万ドルにもなります。
基本家賃以外に、家賃の値上げ、転嫁する経費、また小売店の場合は歩合制家賃も交渉の対象になることがよくあります。不動産管理士は、テナントの売り上げが歩合制家賃を払う額に達するかどうかを判断しなければなりません。それは、テナントのほかの店の売り上げの傾向を調べ、そのテナントの売り上げの分岐点と、アーバン・ランド協会が年2回発行しているショッピング・センターの売り上げに載っている、その小売部門の全国の売り上げの平均とを比べることによって判断できます。
類似した小売店やレストランがそのショッピング・センターにあれば、それらの売り上げと、このテナント候補の分岐点とを比べることもできます。売り上げの分岐点とは、テナントが歩合制家賃を払わなければならなくなる年間売上高です。そうなる可能性が少ないときは、それを黙諾して、その代わりに何か他の譲歩をしてもらうことができるかもしれません。歩合制家賃を交渉する場合、テナントは、歩合を低くし、分岐点を高く設定することを求めるでしょう。分岐点を高く設定すると言うことは、ナチュラル・ブレイクポイントよりも高い売上高に設定すると言う意味です。ナチュラル・ブレイクポイントは、年間家賃をテナントの歩合制家賃の率で割って出します。こうして出た数がナチュラル・ブレイクポイントで、テナントは、ナチュラル・ブレイクポイント以上の売り上げ分に対して、歩合制家賃を払います。分岐点をナチュラル・ブレイクポイントより高く設定すれば、テナントが払う歩合制家賃は減ります。
再度述べますが、テナントの売り上げがどの程度になるか、この要望を呑むことによってオーナーはどれだけの歩合制家賃を失うかを判断する必要があります。始動期間後の売り上げを出す一つのよい方法は、テナントのほかの場所の店舗の売り上げの平均を使うことです。テナントは、基本家賃なしの歩合制家賃を要求するかもしれません。これに合意する場合は、歩合を2-3%高くするよう交渉するべきです。もう一つの案は、歩合制家賃のみを最初の1-2年にして、その後基本家賃に戻すと言う方法です。
小売店は、売り上げが予想以下だった場合にキャンセルできるよう、交渉するかもしれません。これは、低迷しているショッピング・センターやモールのスペースをリースする場合や、経済不況の場合にテナントが心配する事柄の一つです。優良な小売店は、リースをキャンセルできる権利を要求するかもしれません。この権利を与えることは拒むべきですが、これが原因で交渉が難航する場合は、テナントがリースをキャンセルする可能性をできるだけ減らすように、交渉していくべきです。まず、リースの3年目までに売り上げが一定額に達しない場合にのみリースをキャンセルできるようにするべきです。売上高は現実的な数字であるべきで、テナントのほかの店の運営開始後3年目の平均、また全国平均よりも低い額であってはなりません。
何十種類もの小売の全国平均は、ショッピング・センターの売り上げに発表されています。小売店は、少なくとも3回の年末年始を含む3年間は、リースするべきです。キャンセルは、暦年で3年後の1月に、一度だけキャンセルする権利を与えます。また、テナントは、オーナーに120日以上前にキャンセルの通知をしなければなりません。テナントがキャンセル料を払う可能性はあまりありませんが、聞いてみるべきです。
また、小売店は、共同借家条項も解約権の一つとして要求するかもしれません。これは、特定の主要テナントが店じまいをした場合、あるいはショッピング・センターの稼働率が特定のパーセンテージ以下になった場合に、リースをキャンセルする権利です。これは、テナントを将棋倒しに失う可能性がありますので、合意するべきではありません。物件のオーナーがこの条項にどうしても合意しなければならない場合は、主要テナントのスペースが空いている期間のみ歩合制家賃にするべきです。主要テナントが一つなくなったからと言って、他の小売店の売り上げが必ずしも下がるわけではありません。あるいは、この条項の権利を行使する場合は、売り上げが一割以上下がっていなければならないと言う条件をつけることもできます。
市場が悪いときは、テナントは何でも要求するものです。不動産管理士として、あるいはリース仲介業者として、これらの要求に応える準備ができていなければなりません。不況で不動産の市場が悪いときは、何らかの譲歩をしなければリースの取引がまとまらないと言うのが現実です。テナントが交渉してくるであろうリース条項に対してオーナーがどのように対応するか、また最悪の場合の代案など、リース交渉の戦略をビルのオーナーと一緒に作るべきです。それぞれの譲歩が金額にしてどれほどになるのか、またそれを最初に払うのかそれともリース期間を通して払うのかなど、判断できなければなりません。交渉しているそれぞれのリース条項が金額にしていくらになるのかを知ることによって、最善の取引をすることができるのです。
著者紹介
アレックス・アレキザンダー氏(aaacon@cox.net)は、アリゾナ州スコッツデールのアレキザンダー・コンサルタントの社長です。彼は、リーシングのプロセス:オーナーとテナントの観点や、その他多くの営業用不動産に関する出版物を出しています。
CPM®のリチャード・ミュールバック(rmuhlebach@comcast.net)氏は、ワシントン州ウディンヴィルのオフィス不動産のコンサルタントおよび教育者です。彼も、
リーシングのプロセス:オーナーとテナントの観点や、その他の出版物を出しています。ミュールバック氏は、全国でも、また海外でも教えており、専門家証人や裁定人としても活躍しています。