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チキンリトルか用心深い楽観主義か

ミキシングアップ! (“Chicken Little or Cautious Optimist”, JPM® Sep/Oct 2005)

上昇するキャップレートは次なる危機を引き起こすのか? by Alice D. Wilson

価値を予測する方程式としてこの業界のスタンダードツールになり、長く使われてきたキャピタライゼーション、またはキャップレート、それはもはや過去ほど信用できるものではなくなっている。キャップレートは過去3年の間下り坂で、現在記録的最低値である。それと同時に資産の価値は低迷している。この逆説的な傾向は、不動産に関する根底となる考え方を変えていくだろう。

キャップレートを理解する
キャップレートは資産のNOI(年次純営業収益: Net Operating Income)をその購入価格で割って、パーセンテージとして表される値である。キャップレートと資産価値は反比例の関係をもつ。キャップレートが減少するならば、価値は増加する。その逆も成り立つ(キャップレートが上がるならば、価値は減少する)。関係式は3つの変数のうち(キャップレート、NOI、資産価値)の2つの値を仮定することで計算する。賃料の増加や空室率の減少でNOIが増加するならば、それは他の2つの変数にも影響をもたらす。一般に、キャップレートが高いほど、投資のリスクは上昇することになる。キャップレートは他の投資物件と比較するために使われる指標としては、キャッシュオンキャッシュ(投資を行った資金に対して期待できる手取りのキャッシュ)の次に注目される指標である。

Real Estate Monitor 2003年秋号の記事「収益還元と期待利回り:Capitalization and Interest Rates」の中でスチュアート・アイゼンバーク(BDO シードマン LLPパートナー、常務)は、「キャップレートがとても低い物件が購入され、その時の成長見込みが限られたものであるときリスクは高くなる、、、そう、近年のような。ほぼ全てのリスクが以下に挙げる2つの条件のどちらか片方か両方に影響を与え、それが物件価値に影響を与える。」という。
  1. NOIの増加率が予想よりも低い。
  2. 最終的なキャップレートが所得時のキャップレートより高い。
具体的な数字を使ってアイゼンバークは以下のように説明する。6,000ドルのNOI を生み出しているアパートが6パーセントのキャップレートで現金100,000ドルで購入される。もしもNOI が10年目に、年4パーセントの増加により、8,881ドルになるならば、Return on Equity(投資金利回り)は1年目の6パーセントから10年目に8.9パーセントまで増加する。年間平均利益率は、およそ7.5パーセントである。

この利益率が保持期間の間に所得原価、販売経費、資本からの支出を無視すると考えても利益率は株または債券から得られるそれを上回ることにならない。優れた借入金(10年5パーセントの利率のような)は、利益率をわずかに増やすだろう。しかし10年後のより高いキャップレート(または低い売買価格)はNOIと借り入れのやりくりの影響を相殺し、それ以上のダメージを与えるかもしれない。(それは十分あり得る。なぜならこれから金利は確実に上がるであろうから。)

今度は以上の例でNOI の成長率が年8パーセントであると仮定する。売り手は10年目で13パーセントのReturn on Equity(投資金利回り)を受けるだろう。それは保持期間の平均にして9.5パーセントである。いくぶん良い結果にはなる。繰り返すが、10年の後のより高いキャップレートは、売買の収益を大幅に相殺する可能性がある。

サイクリカル(周期的)?セキュラー(永続的)?
マーケットの流れがサイクリカルかセキュラーかの対立する観念は全国的な討論の対象である。サイクリカル論者は、低い金利と(不動産以上の)高いパフォーマンスを持つ他の選択肢がないことが、不動産に資本の大きな流れを引き込むことを主張している。

サイクリカル支持者は、金利が上がるときに資金が他の投資物に流用されると考える。そして、キャップレートは過去にあった水準まで増加する。このシナリオでは、たとえこれが繰り返されるとしても、資本(の不動産への流れ)は一時的であると見る。

「セキュラー論は不動産が基本的にリスクに対して正しく価格付けされていないことを主張する。」と、エドワード・ミジリー(CBリチャードエリス副社長)。「それは(セキュラー論は)不動産投資への増えつづける需要が継続すると考える。そして、分散された投資ポートフォリオで不動産を所有する利点は歴史的にみてサイクリカル論が主張するデメリットを上回るパフォーマンスを見せている。個人でも機関でもこれから先現在の不動産投資の配分を保つだけでなく、これ以上増加していくだろう。そしてまたキャップレートは記録的といわれるほど上昇することはないだろう。」不動産はセキュラー資本であり、それはより永続的で根本的であると、ミジリー。

セキュラー支持者はまた、根本的な業界の変化を不動産の性質の変化と見る。1991年以降、現代のREIT(不動産投資信託)は、証券化された資産を提供してきた。REITの必要条件とされる年四回のオペレーションパフォーマンスの情報公開は、情報の流れと説明責任を明らかにさせ、結果としてより見通しの良いマーケットを作り出した。これらの質の高く定量化された情報は、知的で機能的なマーケットと共に、より低いリスクプレミアムを提供することができた。

ミジリーは、過去の長期の安定した傾向とここ10年間の変化が不動産投資家にとって低いリスクプレミアムの結果を作った、という。まず始めに、投資家は、不動産投資がキャップレートからどの程度のキャッシュフローを得ることができるか知ることができるため、インフレーションに対する良いヘッジの手段であると思ってきた。第二に、不動産は良い配当を払ってきた。5~6%のキャップレートであるREITを、2~3%の政府支援の証券と比較すれば、不動産は夢のような投資対象である。またREITは配当に重点が置かれる点において特別な投資である(配当を生み出すREITが課税を軽減することが許されるため。)第三に、ベビーブーム世代の投資家達がドットコムの落ち込みを目の当たりにして、配当利回りの安全性を評価するようになった。「問題はリスクプレミアム(の動き)と、リスクプレミアムが正しいレベルであるかである。」と、ミジリー。

2004年11月のニューヨークで行われたInvestor Roundtableで、アンドリュー・ダフィー(TIAA-CREF不動産証券常務)はセキュラー論側についた。「我々は、不動産が安定した収益を挙げ、他のアセットクラスとの低い相互関係を示すアセットクラスであり、そして、最も高いリスク調整を成し遂げることができるという見方を維持するべきだ。」と、彼は言った。「20年前から現在までの間、我々は皆で不動産投資ポートフォリオを作ってきた。そしてそれは現在ほぼ500億ドルの価値をもつ。」

キャップと金利の関係
サイクリカルとセキュラーの議論は両方とも説得力のある見方を持つ。どう転がるかはこれからの毎月、毎年の金利の変化で分かるだろう。金利とキャップレートには関連性があるので、負債の費用分は不動産の所有を考えたときに重要な要因となる。

ウィリアム・クローチ(ING Clarion Partners常務)は、近年の記録的に低い金利が資本を不動産に向かわせる重要な役割を演じた点を強調する。Federal Reserveが短期の利回り曲線の終わりに少しずつ金利を増やしているにもかかわらず、長期金利の動向は安定したままである。しかし、その関係図は複雑である。つまり金利の変化はキャップレートに対する1対1の比率関係にはならないと、彼は言う。

クローチは、いくつかの要因が安定した金利環境に貢献すると説明する。まず始めに、インフレーションの傾向は世界的な市場で1980年代から着実に(金利は)下がり続けた。そしてそれは製造業のコストを減らしてきた。第二に、最低記録金利は、資本を不動産に引きつけた。これからの5年にわたり4~5%と予想される金利は現在安定している。増えつづける不動産投資はキャップレートの下降をもたらし、キャップレートと金利の値の格差は過去にない広がりをみせている。大きな資本がこれからも不動産へと流れ続けるならば、キャップレートはさらに圧縮され、金利とギャップはさらに広がるだろう。

キャップレートの今
居住系
スペリー・ヴァンネスの「ナショナルアパートメントトレンド」によると、居住系物件に関するキャップレートは年の初めから25~30ベースポイント下落し、5.5~7%のキャップレートを示している。コンドコンバータ(アパートからコンドミニアムへの切り替え)は、市場で常に優位な立場を演じている。

そのレポートによると、「過去6ヵ月の間で、コンドコンバータ側で考慮される価格とキャップレートは、買い手が払う価格に更なるギャップを生じさせている。」「コンドコンバータの競争は、主にREITと機関投資家の買い手への価格のつり上げが行われる。民間の買い手だけは、1年前に比べわずかに多くのみ支払っている。」

商業系
同リポートによると、商業系物件に関するキャップレートは年の始めから20~30ベースポイント下落し、7.3~8.2%のキャップレートを示している。 レポートは郊外の市場(公営REITと機関投資家が地元の投資家に取って代わってきている)とビジネスの中心になる地区(海外投資家と機関、民間大手がリードする)を区別している。「買い手の構成は価格に直接的な影響を及ぼす重要な要素である。」「現在、海外と機関投資家は最もアグレッシブな買い手の内の一つである。そして、価格は彼らがターゲットとする市場ではより高い価格で売買されている。過去6ヵ月の間で、それらの(アグレッシブな)プレーヤーを引き付けるためキャップレートは25ベースポイント通常の物件より下回った。

工業系
最近の売買価格の揺り戻しにより工業系物件のキャップレートは上昇している。倉庫物件に関しては一定した値にある。スペリー・ヴァンネスの2004年11月の「インダストリアルキャピタルトレンドマンスリー」には、「工業系物件のキャップレートの格差を広げるものは売買の規模であることが分かってきている。機関投資家とREITが比較的少ない大規模物件とそのポートフォリオに対し取引を求め、それがキャップレートを大きく下げた。買い手は現在より小さな取引を行うしかなくなってしまい、それが中規模物件のキャップレートを低下させた。しかし、1250万ドル以下の物件は依然、大規模REITや機関投資家の買占めのターゲットにはなっていない。」レポートは工業系物件のキャップレートが8.3~9.3%の範囲での値をつけたと報告している。

キャップレートは上がるか、下がるか?
不動産業界において、キャップレートの将来の傾向に関する見方は人それぞれである。シカゴで行われたthe Counselors of Real Estateによるカンファレンスで、サム・ゼル(Equity Office Properties Trust and Equity Residential 会長)は、キャップレートがこの先9年間(90日ではなく)低いままになるであろうと言った。過度の流動性をもつ環境では、不動産で発生するインカムストリームはおそらく低いだろう、そして建物の購入価格は高いままである、とゼル。同カンファレンスで、アンソニー・ダウンズ(ブルッキングス研究所シニア)は競争のあるアセットクラスによって提供される金利増加分や、より優れた利益率に対し、購入価格が力を失っていることを指摘した。「何かが不動産への資金の流れを変えたようである。」と、彼は言う。「低いキャップレートが無期限に続くか否かの論争は事実が支えるものだけでは説明できない。」

キャップレートが上がる時何が起こるか?
将来価値を見込んで買われる物件はどうなっていくか?クリフォード・ホックレイ(ブルーストーン&ホックレイリアルティ社長)は、2005年6月の「Quickfacts」コラムで、「会議で最も面白いと思った意外な事実は、我々のロサンゼルスからの友人が言うには、彼の地域で金融機関がプロフォーマ(将来の賃貸料が予算に組まれた会計手法)で融資を行っているということだ。投資家はマイナスのキャッシュフローで管理を行い、毎月の支払いを手持ちのキャッシュでカバーし、それから改装を行うなどして3・4年後に30パーセント超のリターンを狙うというやり方である。」キャップレートを無視するこの傾向は、キャッシュフローモデルというよりむしろ付加価値モデルへの移行である。

過去の歴史をたどると、1990年代後期のドットコム景気の終焉と1980年代の建築ラッシュからきた供給超過と同じことが繰り返されることは避けられようにないように見える。ジェームズ・リー(ケンジントンリアルティアドバイザー社長)は、the Counselors of Real Estateによるカンファレンス上で、金利の上昇が起こるだろうとコメントした。「借用者の多くがイクイティを持たずに投資をしている、過去にも同じことがあったように、1980年代後期と初期の1990代の融資先が(担保としての)物件を手に入れる状況になるだろう。」

上昇するキャップレートにより、強気なコンドコンバータやレバレッジを高くかけた買主が、非常にネガティブな影響を受けることが言われている。その一方で、長期の投資をする投資家は定着してきているように見える。「実際に、私が機関投資家と話すと、毎週毎週彼らの公共年金、企業年金、または贈与基金などからの不動産投資への移行の興味は増えているようである。そしてそれは一時的な傾向とは言いがたい。」と、セオドア・ビッグマン(モーガンスタンリーインベストメントマネジメント)。

何かが気付かせてくれるまで不動産業界はその流れを変えないかもしれない。ネッド・ミジリー(CBリチャードエリス)は、現在の議論を経済学教授の言葉で表現する、「The model is good, pending exogenous shock.(モデルは外側からのショックを受けるまでは善である。)」それはつまり、モデルは変化がもたらされるまで正しいものと見られることであり、(キャップレートへの)その変化はいつでも起こりえるだろう。

ダーネル・リトルは、JPMのライターである。本稿に関する質問は kgunderson@irem.org. にお送りください。

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