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ビルの知能指数
(“Building IQ,” May/June 2007)

インテリジェント・ビルが、世界の不動産市場の一部になりつつある
エマ・ジョンソン著
By Emma Johnson

昔、私達は、ビルのすべての入り口のセキュリティー・カメラの映像が壁一面のモニターに映っているのを見て、「すごいなー」と思ったものです。今日、一人の人が、高層ビルのすべてのシステム(空調、サイン、エレベーター、照明と温度調節、そしてもちろんセキュリティー)を、壁一面のモニターで監視することができます。

インテリジェント・ビルは、珍しいものではなくなりました。専門家によると、以前から取り入れられている、そしてアジアや中近東の新しい開発においてはすでに当たり前になりつつあるこれらのハイテク・ネットワークやビジネス・システムを備えたインテリジェント・ビルは、単にあっと言わせるような将来像ではなくなってきました。

これらは、世界的な不動産市場の必然的な部分になりつつあります。接続性、エネルギー効率、市場の競争の高まる圧力によって、今や、開発業者、リース代理業者、不動産管理士などは、自らを差別化するため、いや生き残るために、インテリジェント・ビルへの投資を検討せざるを得なくなっています。

営業用不動産のROI投資モデルを作成するノース・キャロライナ州シャーロット市に本部を置くコンサル業、インテリジェント・ビルディング・グループの共同創立者トム・シャークリフ氏は、こう述べています。「みんなこのテクノロジーについて知りたがっているのですが、始める前に投資収益率が知りたいのです。テクノロジーがより主流になり、進歩し、明らかに常識的になってくれば、みんなもっと真剣に考えるようになるでしょう。」

知能設計

インテリジェント・ビルは新しいものではありませんが、ミネアポリスに本部を置くインテリジェント・ビル・コンサル業者、ビルディング・インテリジェンス・グループの初代社長ポール・エーリック氏は、定義が曖昧で、混乱を引き起こしていると述べています。

「みんな、インテリジェント・ビルが何なのか分かっているのでしょうかね。人によって意味が違います。」

インテリジェント・ビルは、スマート・ビルディングとか統合ビルなどとも呼ばれますが、エネルギー効率が良い、あるいは環境に良いテクノロジーであると思っている人がいます。デジタルの看板や要覧、ブロードバンドやワイヤレス・サービス、ビルディング自動化システムなど、ハイテクのテナント向けのアメニティーだと思っている人もいます。基本的に、インテリジェント・ビルと呼ばれるためには、何らかのシステムが自動化されており、相互接続されていなければなりません。

ノース・キャロライナ州シャーロット市にあるバランティン・ビレッジは、そのような統合システムビルのひとつです。この娯楽、小売、マンションの74,000平米の複合開発物件は、空調、セキュリティー、看板、照明、噴水が、一箇所で制御されています。

バランティンは、二酸化炭素をモニターすることによって部屋の中の人数を数え、それによって自動的に温度調節します。トイレの石鹸、トイレット・ペーパー、ペーパータオルは、切れると、管理人に自動的に知らせるようになっています。アクセス・パスカードを機械に通すことでテナントのドアを開け、同時に照明と空調システムがつきます。

バランティン・ビレッジのような例があるにもかかわらず、インテリジェントビルを定義する具体的なパラメータの欠如が、米国において、その成長を妨げています。エーリック氏は、エネルギー効率、テナントの満足、労働力の削減、長期的コスト削減などに関するインテリジェント・ビルの価値は、誤解されていると述べています。

これらの技術は米国ではまだテストされていないので、その価値を、収益を上げている米国の開発業者、投資家、不動産管理士に納得させるのは困難だ、と言うのです。統合ビル・テクノロジーに替えるためには、ほとんどの場合、業界のすべてのレベル(設計士、開発業者、リース代理業者、不動産管理士)の再教育が必要です。

ビルダーが、スマートビル・テクノロジーの潜在的な損益へのプラス効果を理解するようになれば、統合化に熱が入るようになるでしょう、とエーリック氏は述べています。

「これは、まったく投資収益の問題なのです。こういう投資の収益率は、何百パーセントと言うような、とんでもない数なのです。」

スマートビルの正当性

米国の開発業者は、まだインテリジェントビルに興味を示し始めている段階ですが、ソウル、東京、シンガポール、香港、デュバイなどでは、新しい開発には統合システムがフルで使われています。資金が十分にあるインテリジェントビルは、米国のスケールの大きな営利目的の企画をしのぐ勢いで、記録的に伸びています。

不動産テクノロジーを専門とするリサーチ会社、リアルコムの共同設立者であるジム・ヤング氏は、アジアではインテリジェント・ビルが主流になっているので、開発業者は、プロジェクトのコストを正当化する必要が無いと述べています。それで、建てるのが簡単だと言うわけです。

「これは、新築の新しいベンチマークになっていますので、開発業者が、設計士やエンジニアに、プロジェクトの一つ一つの要素のコストを正当化させるなどということはありません。統合システムが主流です。エレベーターのコストを正当化しろなどという人がいないのと同じです。」

アジアでは、統合システムが、コスト削減によって、物件のオーナーや管理士に利益をもたらし、また、ますますグローバル化する不動産市場で競争力を与えてくれます。

しかし、米国の開発業者は、コストとトレーニングが必要であることと、またハイテクビルを建てる必要性が無いことを理由に、インテリジェントビルを開発することに躊躇してきました。米国では、ここ数年、不動産市場が良かったので、開発業者は、余り良くない場所でも、簡単に建てて収益を上げることができました。イノベーションや競争力など、必要なかったのです。

「ビルダーは、長期的な投資を考えていませんでした。建てればよかったのです。」とエーリック氏は述べています。

また、燃料費は上がっていますが、他の国と比べると、オイルや電気は米国ではまだまだ安価で、米国のビルダーや消費者は、省エネのテクノロジーに投資するインセンティブが無いのです。

しかし、インテリジェントビルは、米国市場でも現れ始めており、計画中のものもあります。ネブラスカ州オーマハー市のレイクサイド病院は、2年ほど前にできたばかりですが、最も配線の多い建物の一つとして有名で、数多くの統合システムは、患者の生活や、治療と請求の正確さを向上させ、同時に病院のコストも削減しています。

レイクサイド病院は、集中化されたデジタルの患者データを使っており、医者、看護婦、事務は、病院のどのシステムからでも、医療と医療費に関する情報をアクセスあるいは更新することができます。また、保護されている患者のポータルを使って、個人的に、オンラインでアポをとったり、テストの結果を調べたり、喫煙や肥満に関するコーチングを受けたり、経済的援助の申し込みをしたりすることができます。これらの機能によって、患者が情報をアクセスしたり、病院の労働力を削減したりすることができるのです。

ROI要因

米国でインテリジェント・ビルが取り入れられるようになる前に、国中の不動産の専門家が、数字によって、その効率を確信する必要があります。リアルコムの業務担当社員であるダーリーン・ポープさんは、リアルコムの顧客は、もっと長くかかるテクノロジーもありますが、18ヶ月以内に投資からの収益が出ることを求めると言っています。

シャークリフ氏によると、建築業者は、基本的なケーブル・インフラ効率を使って、ケーブル経路を9~10から2~3に減らすだけで、簡単に、1平米当たり22ドルのコスト削減をすることができると述べています。また、無駄のないネットワークによって、その後も、年間1平米あたり11ドル、コスト削減できるそうです。また、これは、オーナーあるいはテナントが必要とする複雑なインテリジェント・システムを、効率の悪いネットワークよりも安く組むことができる骨組みともなります。

「これは、建築プランの常識です。整頓されて効率の良いものの方が、スパゲティみたいなものより良いのは当然です。」とシャークリフ氏は述べています。

エーリック氏は、彼が手がけたあるスマート・プロジェクトのテクノロジーは、18ヶ月で資本回収できたと述べています。この65,000平米のプロジェクトは、空調、照明、セキュリティー、カード・アクセス、火災報知機が、統合されていました。営業時間外は、統合システムが労働者を識別し、ビルやフロア全体ではなく、その人の仕事場に合わせて、照明、セキュリティー、温度の調節をします。

後からシステムを取り付ける場合は、新築に含まれているわけではありませんので、既存の建物のシステムを取り替えるには、余分なコストがかかります。それでも、最終的には大きな利益ができます。

ソフト・メーカーのアドービーは、2001年に、カリフォルニア州サンノゼ市の本部に、エネルギーと環境の改良システムを取り付けました。改良したものの中には、リアルタイムで自動的に天気に合わせる灌漑システムや、一酸化炭素のレベルを測って空気の品質を改善する換気扇などがあります。5年後、アドービーは、115%に当たる$728,000のコストを削減することができました。

しかし、エーリック氏によると、会社が削減したコストを追跡しても、投資収益率は必ずしも明瞭ではありません。例えば、テナントが、1平米当たり平均$270の家賃、$16の燃料費、従業員の経費を$1,600払っているとします。

インテリジェント・ビルは、仕事環境が良くなったことで従業員の生産性が1%、つまり1日に3.5分向上し、それも含めて、1平米当たり、コスト削減と生産性の向上で$11から$32の利益があるとします。それによって、開発業者や不動産管理士は、テナントの満足、高賃料、高稼働率、サービスや運営費の削減による収入の増加などの浸透効果を得ることができるわけです。

「テナントの環境と生産性を向上させ、同時にエネルギーと運営スタッフのコストを下げるのが目的です。」とエーリック氏は述べています。

プレッシャーのかかった状態

米国において投資収益率がより積極的な取り組みを促さない場合、地平線のかなたからのプレッシャーが、開発業者に、新しい物件、いや既存のビルも、インテリジェントにするよう刺激するでしょう。多岐にわたる不動産の専門家は、市場の減速による危機感を感じています。

市場がよりグローバル化され、多国籍企業が海外業務を拡張するにつれて、営業用不動産は、地球の反対側にあるものと比べられるようになります。香港のインテリジェント・ビル、インターナショナル・ファイナンス・センターⅡに入っている世界中のバリバリの金融サービス企業は、ファイナンス・センターのような最先端の物件が新しいスタンダードだと考え始めています。

「世界がグローバル化するにつれて、人は、ニューヨークは20世紀のものだと感じるようになるでしょうね。」とヤング氏は述べています。

インテリジェント・ビルは、激増する不動産投資信託に内在する収益増大圧力も緩和することができるかもしれません。エーリック氏は、インテリジェントビルを開発するようにと言うリートのプレッシャーは、統合システムのみが提供できる最新技術や費用効果がないと、最高のテナントをひきつけることができないと考える最高投資責任者や経理から来ると言っています。

また、米国でのエネルギー費の上昇は海外ほどではありませんが、投資家はやはりコスト削減を望んでおり、開発業者は、省エネを図らざるを得なくなります。インテリジェントビルのテクノロジーは、エネルギーのコストを20%削減することができます。
また、営業用不動産は、消費者向けのテクノロジーが躍進し続けている居住系市場よりも遅れています。ワイ・ファイのアクセスや統合された企業運営などは、家庭で当たり前になりつつありますので、消費者は、職場でもそれらを当然のこととして期待するようになっていると、リアルコムのポープさんは述べています。

「人は、生活の場にあるようなテクノロジーは職場でも要求するものです。家では無線システムがあるのに、職場では携帯が使えないなんてことじゃね。」

米国不動産業界では、統合ビルの開発が遅れていますが、専門家の話によると、インテリジェントビルへの関心は高まりつつあるようです。

「10年前なら、ビルに光ファイバーがなくても問題になりませんでしたが、今は、高速インターネット・アクセスがなければ、オフィスをリースすることはできません。5年後には、ワイヤレスがなければ、競争できないでしょう。」とポープさんは述べています。

エマ・ジョンソンさんは、JPMの寄稿者です。この記事に関するご質問は、mnaso@irem.org にお寄せください。

補足記事

点を結んで統合する
統合システムは、ビルの色々な要素をつなげることができる

統合できるシステムの種類は増え続けています。以下の処理は、効率をよくするために、他のものとつなげることができます。ほとんどの統合システムにおいては、一つ、あるいは数個のインターフェイスで、これらすべての要素をつなげて操作することができます。その結果、使い勝手が良くなり、テナントが満足し、新しいテクノロジーができたときのアップグレードがより簡単になり、そして、ほとんどの場合、コストを削減できます。

  • 照明
  • エネルギーと空調の効率
  • エレベーター
  • セキュリティーとアクセス
  • 火災報知機
  • デジタル看板、インターアクティブなタッチパネルの要覧、広帯域サービス、ビデオ会議、インターネット電話、ゲスト・アクセスなどのアメニティー
  • 支払勘定と受取勘定などの自動化された業務、見積依頼書、リース、その他の契約書のファイルをオンラインで見ることができる機能、ホームページで建設工事の進み具合を見ることができる機能
  • 環境適合性だけでなく、エネルギーと水の効率を確保するグリーンビル技術
  • フレックスな作業空間など、テナントに役立つビルのデザイン


  • スムーズなオペレーション
    香港のインターナショナル・ファイナンシャル・センターⅡは、作業機能が統合されています。

    この、小売、オフィス、ホテル複合ビルは、有名な建築士、セザー・ペリによって設計され、2003年に完成しましたが、物件の作業機能を一つの集中的インターフェイスにまとめています。88階建てのこのビルは、市で最も高いものです。世界のトップの金融業者がリースしているインターナショナル・ファイナンシャル・センターⅡは、香港で最も好まれる住所の一つです。

    インターナショナル・ファイナンシャル・センターⅡの地下にある制御システムは、世界で最も高性能なものの一つです。リアルコムのジム・ヤング氏によると、幅6メートル、高さ4.5メートルの壁にある300のモニターは、「NASAに匹敵するデスク・コントロール・システム」だそうです。

    システムは、各テナントの温度調節、17基のエレベーター、領域制御による照明、ブロードバンド、防犯カメラ、アクセスとゲスト管理、毎分ビルから出入りする水の量を測る用水設備と冷却機をモニターします。この装備一式は、一人あるいは二人でモニターのデータを管理できます。

    インターナショナル・ファイナンシャル・センターⅡは、上げ床で、2本の光ファイバー引込み線があり、支柱がない間取りですので、フレックスな作業空間になっています。


    デジタル看板
    ソウルのデジタル・メディア・シティーは、デジタル看板でコミュニケーションします。

    この28万平米のメディア娯楽センターは、ワールド・カップ・センターと7,000戸の団地を含む、ソウルの新しいビジネス住宅センターの一部として埋め立てたごみ廃棄場にゼロから建てたもので、ごみから出るガスで暖房します。

    起工が2003年、完成は2010年の予定ですが、デジタル・メディア・センターは、街の統合システムとして最先端を行くものです。多くのメディアの呼び物が目玉になるでしょう。

    自家用車のカーナビは、道の表示、標識、信号とコミュニケートして、車の流れを良くし、駐車する場所を探すのを助けてくれるようになります。バス停には、リアルタイムでルートやスケジュールが表示されるようになるでしょう。

    地上のインターアクティブなサインは、デジタル・メディア・センター、イベント、道案内などの情報を、入居者にもお客さんにも、同じように提供してくれます。これらの情報は、携帯やPDAでも見ることができます。


    便利な機械装置

    ソウルのユビキタス・ドリーム・ホールは、「宇宙家族ジェットソン」のような生活を現実にします。
    ソウルの中心にあるこの最先端の生活兼仕事空間には、サムスンのような技術系の最大手企業が参加しています。

    ジェットソンのような世界を創り出しているこのプロトタイプ・アパートには、入居者が仕事に行っている間に自動的に掃除をしてくれるロボット掃除機、賞味期限が近いものを主に使って、中に入っているもので作れる料理のレシピを作ってくれる冷蔵庫、映画を見るときに自動的に下りるブラインド、色々な服を着たデジタル・イメージを映してくれる鏡などがあります。

    同様に、職場での未来的な機械(自動的に同時通訳してくれるテレコンフェレンス)、車(道の状況や天気によって案内してくれるカーナビ)、医療(診断を助ける臓器の3-Dイメージ)なども、印象的です。このようなテクノロジーによって、バス・ターミナル、スーパー、入居者の職場、またそれ以外の場所でも相互に連結されて、交通機関、小売店、通商、コミュニケーションが、シームレスにできるのです。

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